地域における自転車利用者の満足度を評価する指標の提案
個別路線ではなく地域全体を単位とした自転車通行環境の利用者満足度の評価手法を提案している日本の研究。
出典
要旨
背景
行政による自転車インフラ整備やルール啓発の効果を検証するには整備延長や違反率といった定量的な指標だけでなく利用者の満足度も調べる必要がある。利用者満足度の指標は国内外にさまざまな例がある。この研究では個別の路線ではなく地域全体を評価対象とし、安全性と快適性を評価する指標を提案する。
方法
結果
結論
提案した評価指標は、同じ地域の時系列比較や、満足度に関わる個別の要因の特定に有用である。
寸評
海外の既存の評価手法の例として豪・米のBikeability Toolkit/Checklistしか挙げておらず、オランダの自転車利用者協会によるFietsbalans(第1期調査が2000〜2003年)を取りこぼしている。豪・米の評価手法には、Fietsbalansが評価項目に含めている「移動手段としての競争力(車より早く目的地に着くかどうか)」という概念がない。
グループインタビューを実施するまで、信号待ちの時間・回数が評価指標になることに研究者らが思い至らなかったことも象徴的。自転車インフラ整備の大きな目的の一つは車の利用抑制で、そのためには自転車移動の所要時間を減らして自転車を有利な選択肢にする必要があるが、日本では見落とされがちだ。
各指標の重み付けではアンケート結果をストレートに反映して信号待ち時間・回数の係数を下げているが、これは不適当な判断。信号待ちは自転車移動の所要時間の3分の1を占めることもあり、決して軽視できない。
このアンケートで信号待ちを重視しないという結果が出た理由として考えられるのは、
- 自転車に(あまり)乗らない人を除外したことで、現状の自転車利用環境を受け入れている人だけが抽出された
- 信号待ちが多いのが当たり前の環境で暮らしてきた
- 待ち時間のロスが今以上に減る可能性を想像したことがない
など。もし回答者が
- 個々の自転車を検知して青に変わる感応制御の信号
- 信号待ちのないラウンダバウト
- 陸橋やアンダーパス
などで実現されるノンストップ通行環境がどれほど快適なものかを知ったら、現状にはとても満足できなくなるだろう。