Einsatzbereiche von Radfahrstreifen in Mittellage

交差点手前で自転車レーンを直進レーンと右折(日本の左折相当)レーンの間に挟んだレイアウトへの転換後に重傷事故の割合が増えたと報告するベルリン工科大学のレポート。

出典

Thomas Richter et al. (2019). Einsatzbereiche von Radfahrstreifen in Mittellage. Technische Universität Berlin, Fachgebiet Straßenplanung und Straßenbetrieb. https://www.static.tu.berlin/fileadmin/www/10002263/Abschlussberichte_SPB/Schlussbericht_RiM.pdf

大学公式の研究プロジェクト紹介ページ
https://www.tu.berlin/strassenplanung/forschung/projekte/abgeschlossene-projekte-auswahl/einsatzbereiche-von-radfahrstreifen-in-mittellage


要旨(和訳)

本レポートには要旨が無いので代わりに「6. 結論と展望」節と目次を翻訳する。[ ]内は訳注。

6 結論と展望

研究プロジェクトの一環として、中間自転車レーン[Radfahrstreifens in Mittellage (RiM); 車の直進レーンと右折レーンなどの間に挟んだ自転車レーン]の設置前後における、自転車事故のあった48箇所の交差点流入部について調査した。

この形態の利用者誘導は交差点周辺における総合的な安全性に対して正の影響を持たないことが示された。特に、[発生場所が]織り込みエリアに移った事故は安全上のリスクを呈している。これらの事故が交差点の直近エリアでの事故よりもはるかに頻繁に重傷に繋がっているためである。ドイツの法令にはRiMの採用や設計について詳細な基準が無いため、RiMはしばしば望ましくない状況や望ましくない幾何構造で設置されている。特に、幅が標準未満だったり長さが短いRiMでは負の効果が見られた。

RiMが標準の幅かつ十分な長さ[*]でペイントされていれば、自転車交通の安全性に正の影響をもたらす可能性がある。加えて、この形態の利用者誘導は、自転車交通量が顕著に多く、かつ右折自動車の交通量が中程度までの場合に限り推奨できることが示された。

本研究プロジェクトの枠内で調査したRiMは信号交差点における直進自転車用のもののみである。1段階で左折する自転車用のRiMも、無信号交差点におけるRiMも、本研究プロジェクトのごく一部でしか扱っていない。この領域のさらなる研究が必要である。

[* 本文 (p. 27) で詳しく説明されているが、長ければ長いほど良いというわけではない。]

目次

  • 図の一覧
  • 表の一覧
  • 1 はじめに
  • 2 先行文献の分析
    • 2.1 中間位置の自転車レーンの定義
    • 2.2 関連法令
    • 2.3 過去の研究プロジェクトにおける発見
  • 3 抽出した中間自転車レーンについて実施する調査の計画と方法
    • 3.1 調査計画
      • 3.1.1 調査対象路線の選定
      • 3.1.2 使用データ
      • 3.1.3 中間自転車レーンの類型化
    • 3.2 研究方法
      • 3.2.1 マクロ/ミクロ事故分析
      • 3.2.2 事故パラメターの算出
      • 3.2.3 交通行動と交錯の分析
      • 3.2.4 中間自転車レーン利用者への聞き取り調査
  • 4 対象都市における抽出された中間自転車レーンの調査結果
    • 4.1 事故分析
      • 4.1.1 事故件数の推移
      • 4.1.2 織り込みエリアへの遷移効果
      • 4.1.3 事故の重傷度への影響
      • 4.1.4 事故に遭った人数
      • 4.1.5 移動手段別の当事者
      • 4.1.6 自転車利用者の年齢別、性別の当事者
      • 4.1.7 事故の相手当事者
      • 4.1.8 事故類型(主に自転車利用者が原因)
      • 4.1.9 事故類型(主に相手当事者が原因)
      • 4.1.10 事故原因(主に自転車利用者が原因)
      • 4.1.11 事故原因(主に相手当事者が原因)
      • 4.1.12 主要原因ではない自転車利用者の過失
      • 4.1.13 事故のその他の特徴
      • 4.1.14 事故分析の中間取りまとめ
    • 4.2 事故パラメターの算出
      • 4.2.1 着色
      • 4.2.2 RiMの長さ
      • 4.2.3 RiMの幅
      • 4.2.4 手前[RiMに至るまで]の通行空間[の種類]
      • 4.2.5 [右に]曲がる車の交通量
    • 4.3 交通行動と交錯[コンフリクト]の分析
      • 4.3.1 RiMの受容[年代別、性別の利用率]
      • 4.3.2 交錯した自転車利用者の年齢と性別
      • 4.3.3 交錯発生率
      • 4.3.4 交錯の相手
      • 4.3.5 交錯の原因と位置
      • 4.3.6 交錯の回避と潜在的な事故の結果
    • 4.4 RiM利用者に対する聞き取り調査
      • 4.4.1 調査対象者の特性
      • 4.4.2 通行または忌避の理由
      • 4.4.3 RiMの視覚的認識
      • 4.4.4 主観的安全性の認識
      • 4.4.5 構造上の特徴と適用基準の影響
      • 4.4.6 他の交通参加者の影響
      • 4.4.7 回答者の視点からの示唆
  • 5 結果の評価と指針の検討
    • 5.1 安全効果
    • 5.2 RiMの採用
    • 5.3 RiMの構造
  • 6 結論と展望
  • 7 出典
  • 8 付録[調査対象交差点の平面図、聞き取り調査の質問票など]

寸評

重傷事故率の増加

RiM導入の前後3年ずつを比較した研究デザイン。導入後の人身事故は件数こそ7.6%減ったものの、重傷事故の割合は9.8%から15.8%に増えた (pp. 18-19) という結果は注目される。

「RiMをペイントしても事故の発生場所が交差点からその手前の織り込みエリアに移るだけなのでは?」という誰もが当然考える予想も実証しており (p. 18)、そのエリアにおける重傷事故率が22.2%と、整備前(発生場所は交差点)の約2倍に跳ね上がっている (p. 19) ことを指摘しているのは重要だろう。

ただし、この調査では自転車交通量の推移データがないことや、若年層はRiMの利用率が低いことなどに注意が必要。

主観的安全性

RiMが抱えるもう一つの大きな問題点は、両側から車にサンドイッチされる不安感だ。特に子どもを連れた親にとっては走りたくない通行空間だろう。しかし意外にもこの調査では回答者の82%がRiMを「(ほぼ)毎日使っている」(p. 33) と答えている。

安心感については

  • とても安心 10%
  • どちらかといえば安心 44%
  • どちらかといえば不安 38%
  • とても不安 7%

と拮抗よりもやや安心寄りだ(RiMや交差点の特徴ごとの評点も算出しているが、多変量解析はしておらず、どの因子がどう安心感に影響しているかは不明)。

ただし、この聞き取り調査は「交通行動分析と並行して現地[…]14箇所の交差点で」(p. 17) 実施されたものなので、選択バイアスが生じていると考えられる(不安感の強い人はRiMのある交差点・路線を避けていたり、自転車自体を使っていない、など)。

ちなみにRiMを使う理由の95%は「義務だから」(p. 33) と、ドイツらしい結果に(ただしこれも質問票の最初の選択肢だからかもしれない)。

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