The Dutch road to a high level of cycling safety
オランダが自転車事故を激減させた要因を概括したレビュー論文。自転車と自動車の体系的な分離、交差点の改良、自転車の分担率の高さ、自転車の速度の低さなどを指摘している。
出典
Schepers, P., Twisk, D., Fishman, E., Fyhri, A., & Jensen, A. (2017). The Dutch road to a high level of cycling safety. Safety Science, 92, 264–273. https://doi.org/10.1016/j.ssci.2015.06.005
要旨(和訳)
多くの政府が自転車事故の抑制と自転車利用の促進のために自転車の安全性向上に取り組んでいる。オランダは自転車の利用と安全性において世界をリードしている。本論文では、オランダがどのようにして、自転車10億走行km当たりの自転車乗車中の死者数(大部分が自転車と自動車の衝突事故)を30年間で80%減少させたかを探る。
この改善に寄与した要因として判明したのは、
通過交通を排除した広範な交通規制区域を含む道路階層の確立。自転車交通量の多い街路から、大量の自動車交通を受け入れている高速道路網に自動車をシフトさせたことで、高速走行する自動車に曝される機会が抑えられている。
分離された自転車道と交差点設計の工夫による、自転車と自動車の衝突の可能性の減少。
自転車利用の多さによる安全性の向上。自転車の交通分担率が高いほど自動車の分担率が下がり、ドライバーの自転車利用者に対する意識も高くなる[自転車を予期した運転をするようになる]ため。
自転車の速度の低さもオランダの自転車利用の高い安全性に寄与していることが分かった。
寸評
自転車事故に関するあらゆる要因について先行研究に当たり、それぞれの結果をまとめた現地の研究者による論文。日本の一部有識者が主張する「自転車道はオランダでも例外的」「車道通行原則が事故抑制に効いた」という理解がいかに的外れで断片的なものかが分かる。